口蹄疫は何が怖い?ヒトにうつるの?過去の事例から殺処分する理由を調べてみた
新千歳空港で渡航者の持っていた生の山羊肉から、口蹄疫のウイルスが検出されたとニュースになりました。
空港・港湾の検疫で、感染性のあるウイルスが検出されたのは史上初とのこと。
ドラマ・リラの花咲くけものみちでも、ちょうど口蹄疫に関する話が扱われていたタイミングでの事でした。

口蹄疫って何がそこまで怖いんだろう?
調べてみると、
口蹄疫は人には感染しないという事が分かりました。
口蹄疫に感染した肉は市場に流通しません。また、口蹄疫ウイルスは酸や加熱に弱く、感染した肉を人が食べる事で口蹄疫に感染する恐れもないそうです。
それならどうして殺処分する必要があるのでしょうか?調べてまとめてみました。
口蹄疫はどんな動物がかかる?
口蹄疫に感染するのは偶蹄類

口蹄疫は、偶蹄類にのみ感染するウイルスで起きる病気です。
牛、豚、羊、山羊、鹿、イノシシ、キリン、カバなどが偶蹄類です。

馬やロバはかからないんだね
どうして殺処分するの?
万が一感染した肉を人間が食べても大丈夫です。
それなら、食べればいいのでは?と思ってしまう貧乏性な一消費者の私。
牛・豚たちにとっては口や蹄に水疱ができ、痛みでご飯を食べたり・歩くのが難しくなったりします。かかってしまったら治療薬はなく、自然治癒を待つことになります。

人間で言うところの手足口病みたいでしんどい!
口蹄疫にかかった家畜は衰弱し、肉や乳の生産に影響がでます。
ワクチンはあるものの、接種してもウイルスは完全になくなりません。また、無症状だけど、ウイルスを持っている可能性があります。
口蹄疫による感染が発見された場合、国際基準(OIE=国際獣疫事務局)により「口蹄疫発生国」は清浄国認定を失い、国全体の畜産物が輸出停止になります。
発見が確認されたらその農場では全頭殺処分→感染が広まらないように対策をする事になります。被害を最小限に食い止めるために、口蹄疫だと分かったら殺処分しなければならないのが現在の状況です。
国全体を守る為の対応とはいえ、大切に育ててきた牛や豚を、症状が出ていなくても手放さなければならない酪農家さん、農家さんの気持ちを思うと胸が痛みます。
口蹄疫が出てしまうと、金銭的にも精神的にも、とても辛い事になってしまうのです。
口蹄疫はどこから来るの?


感染力が非常に強く、空気感染で数km〜数十km先にも届いてしまうレベルで海を越えて感染した事例もある口蹄疫。
人が移動する事で、車両・衣服・靴などにウイルスが付着して、運び屋になってしまう事があります。
2010年宮崎への北海道NOSAI派遣隊は
- 携帯電話をビニール袋で密封
- 現地入りごとに衣服を4段階で着替えて廃棄
- 帰宅後5日間は家族との接触も控えマスク着用
ウイルスを人が運ぶことへの徹底した警戒が取られていたと記録されていました。
また、外国からの飼料や稲わらにウイルスが付着していたり、感染した肉を餌にしてしまったことで感染する事も。
シカやイノシシも口蹄疫にかかるので、野生動物から感染するという恐れもあります。
日本の口蹄疫事例


2000年・宮崎の場合
2000年3月25日、宮崎で口蹄疫にかかった牛が発見されました。日本では92年振りの事でした。
発症した牛、発症してないけど感染してるかも、な牛が合計35頭処分される事に。
感染経路は分からないものの、輸入稲わらが原因かも?と言われています。
2000年・本別の場合
宮崎で口蹄疫が発生→もしかしたら輸入稲わらかも?ということで、
日本全国で、九州から牛を買ったところ&輸入稲わらを買った農場を検査する、農場隔離検査プログラムが進められました。
かかってるかも?な検査結果が出たところを絞って、更に詳しい検査をしたところ、症状が出ていないけれど陽性の牛が本別で5月11日に見つかりました。
5月12日には牛が705頭処分される事に。
その後広がる事がなく、ひどいことになる前に事態は終息します。
たまたま低病原性株だった、たまたま牛だけの感染に終わり、豚など他の偶蹄類に飛び火しなかった、という事で大きな被害にならなかったとも言われています。
2010年・宮崎の場合
2010年4月20日の宮崎で口蹄疫に感染した牛が発見されます。
7月4日までには5市6町292農場に拡大、ワクチン接種畜も含めると牛約7万頭、豚約22万頭、合計約29万頭を殺処分する事態になりました。


どうしてこんな大変な事に…
牛の感染が発見された時には、すでに豚を含む複数の農場で感染が広まっていたと考えられています。
- 2000年より強いウイルスだった
- 海外からの侵入防止策の不徹底
- 初動の遅れ
- 国と県の連携不足
- 消毒ポイントの不足
- 周辺農場調査の問題
- 埋却地確保の遅れ
感染が広がるスピードに人員・資材・埋却地の確保が追いつかず、処分待ちの家畜がいる間にさらに感染が広がるという事態にも。
8月26日に家畜糞尿の堆肥化による滅菌処理完了、8月27日に発生から4ヶ月ほどで終息宣言が出ました。
2011年2月5日、OIEにより清浄国への復帰が認められました。
侵入経路は特定されず、近隣アジア地域の流行株と遺伝的に近縁とされるのみで終わりました。
北海道NOSAIから25人(全国NOSAIからは55人)の獣医師が派遣され、
現地では2枚のタイベックス防護服+ラテックス手袋+厚手ゴム手袋+長靴を重装備して作業。作業後は殺処分した牛への黙祷、東京と釧路の間で衣服を段階的に廃棄しながら移動、帰宅後は徹底した洗浄・うがい・鼻洗浄をしていたそうです。



すごいお仕事…!
周辺に絶対広めない!という覚悟を感じました。精神的にも本当に大変なお仕事だったと思います。
外国での口蹄疫
口蹄疫で大変なことになっているのは、日本だけではありません。
2001年にはイギリスで大規模な被害が出ています。
市場での売買最盛期だったため、豚→市場→羊で爆発的な感染になったり、空気感染で海を越えて被害が拡大したと考えられています。
農林水産省の「アジアにおける口蹄疫の発生報告状況(2019年以降)」を見ると、日本の近くアジアの国々ではほとんど毎年口蹄疫が発生しています。
最後に・私たちができること
一消費者側が口蹄疫に対してできることを考えてみました。
海外に行ったら農場・畜舎・畜産関係施設には不用意に近づかない。
肉やハム・ソーセージなど畜産物は持って帰って来ない。食べきる。
新千歳空港で生の山羊肉に口蹄疫が見つかりましたが、人間が食べても大丈夫といっても、ウイルスが万が一にも偶蹄類に届いてしまったらとんでもない事になります。
食べたいものは思い切り食べて、思い出だけ持ち帰ってきましょう。家族に持って行ってあげたい時は、思い出話にしとくのが安全です。
酪農家さんや農家さんの敷地に許可なく立ち入ったり、近づかない。
日本で外国で、もし無茶な事をしようとしている人がいたら、優しく諭してあげれたらいいのかな?と思いました。
個人的な気持ちですが、子どもから手足口病がうつってひどい目にあった身からすると、口蹄疫ってすごくつらいんだろうなと。
牛や豚たちが口蹄疫にかかってひどい目にあわずにいられますように。悲しい思いをする人が出ませんように、と思わずにいられません。
参考にした情報一覧
- NOSAI本別家畜診療所 有坂孟弘氏「北海道本別町に発生した口蹄疫とNOSAIの対応について」
- 福井県 家畜保健衛生所「口蹄疫」
- 農林水産省「口蹄疫に関する情報」「平成12年の国内における口蹄疫発生の経緯及び対応」
- 日本獣医学会「口蹄疫Q&A」
- こだわりアカデミー/東京農工大学 白井淳資氏インタビュー「『口蹄疫』は治る病気なのに、どうして騒ぎは大きくなった?!」(2010年9月号)
- 酪農ジャーナル電子版(酪農学園大学)高橋俊彦氏・北野菜奈氏「農場のバイオセキュリティを考える 第11回『2010宮崎口蹄疫』の現地対策から見えたもの」(2021年掲載、北海道NOSAI派遣獣医師の現地記録)










