ジャガイモシストセンチュウって何?生食用輸入で北海道の種芋に影響懸念ってなんで?
テレビやSNSで「ジャガイモシストセンチュウ」という言葉をよく聞くようになりました。
アメリカからの一般流通用の生鮮ばれいしょ(いわゆる生食用ジャガイモ)の輸入に関するニュースにもよく触れます。
北海道にはいってきたら種芋が危ない!という話も。

そもそも、ジャガイモシストセンチュウってなに?
その虫がついたジャガイモを食べたらどうなるの?
そもそも、ジャガイモシストセンチュウってなに?その虫がついたジャガイモを食べたらどうなるの?
と思ったので、子どもに聞かれた時に答えられるように調べて見ることにしました。
結論から言うと、ジャガイモシストセンチュウは、ジャガイモなどの農作物にとって厄介なすごく小さくて見つけにくい虫という事がわかりました。
人間や家畜に寄生するとかでもなく、ジャガイモシストセンチュウがついたジャガイモを食べたら死んじゃうとか、そういう危険ではなく。
じゃあ、ジャガイモシストセンチュウの何がそんなに厄介なの?という事をまとめてみました。








生食用と加工用と種芋って何がちがうの?
など気になったことをひたすら調べてまとめてみました。
ジャガイモシストセンチュウってなんだ
ジャガイモだけにつくの?


ジャガイモシストセンチュウが寄生する植物は、ジャガイモなどのナス科植物だそうで。
トマト、なす、ピーマン、唐辛子、パプリカ、ししとうなどが仲間になります。








じゃあ、サツマイモとか長芋とか里芋は?
さつまいも(ヒルガオ科)、ながいも(ヤマノイモ科)、里芋(サトイモ科)はどれも別の科の植物で、この線虫の寄主植物ではありません。
名前に「イモ」がついているだけで、植物としては赤の他人ということですね。
ジャガイモシストセンチュウってどんな生き物?


ジャガイモシストセンチュウは、土の中に棲む線虫です。ミミズみたいな細長い虫で、ものすごく小さい生き物です。
シストは直径約0.5mm、幼虫は体長約0.5mm、雄成虫でも約1.2mmほどになるんだとか。
センチュウには色々種類がいますが、その中のジャガイモシストセンチュウが、ナス科植物の根に寄生して、植物から栄養を吸収します。



養分をとるってことは、ジャガイモが育ちにくくなっちゃう
雌は死ぬと「シスト」という、とても小さな丸い玉みたいなものになります。
一つのシストの中には200〜500個の卵が入っていて、乾燥や低温にとても強く、寄主となる植物が現れるまで土の中で15年以上生き延びられるのだとか。
作物への被害はすぐ出るものじゃない→見つけるのも時間がかかる→確実な対策を取るのが難しい
ということで、一度畑に入ると根絶には長い年月が必要に。





美味しいジャガイモをたくさん育てたいのに難しくなるね
シストセンチュウがいるかどうやって調べるの?








こんなに小さくて土の中にいるなら、どうやって見つけるんだろう?
ジャガイモシストセンチュウは、畑のジャガイモの様子を見るだけでは、発生しているかどうかを判断できないことがあります。
そのため、植物の検査だけではなく、土壌を採取して調べる方法もあります。
農林水産省の植物防疫所では、土壌検査の方法のひとつとして、土を透明なカップなどに入れてジャガイモを植え、50~60日ほど栽培して、雌成虫が現れるかどうかを調べる方法も紹介されていました。
種芋と生食用と加工用の違い


テレビで聞くようになった、生食用ジャガイモの輸入が始まったら北海道の種芋が危ないというような話。
でも、加工用ジャガイモは輸入してる、という話も聞きます。








加工用と生食用と種芋って何が違うの?
アメリカからの加工用って?
ここでいう「加工用」は、ポテトチップスやフライドポテトなどの原料として使われるジャガイモのことです。
もちろん、加工用=外国産というわけではありません。
北海道などで生産された国産ジャガイモにも、ポテトチップスやでんぷんなど様々な加工用として使われるものがあります。








アメリカから輸入されている加工用のジャガイモは?
というと。
日本では現在、一般流通用の生鮮ばれいしょの輸入は禁止されています。
アメリカからの輸入内訳(生いも換算)を見ると、冷凍品(フレンチフライなど)が81.5%、フレーク・マッシュが12.5%、生鮮(ポテトチップス用)は5.6%です。
生のまま輸入されるのはポテトチップス用だけで、決められた工場へまっすぐ運ばれて加工されます。
冷凍フライなどは、アメリカ国内ですでに加工された状態で日本に来ています。
アメリカ側では、生産地の調査や土壌検査などを行い、ジャガイモシストセンチュウ・ジャガイモシロシストセンチュウが発生していないと確認された地域から出荷することになっています。
収穫後のジャガイモも検査され、植物検疫証明書をつけて日本へ送られます。
日本に入ってからも、密閉型のコンテナで運び、決められた港頭地域内の指定工場へ直接運ばれます。
そして一度も他の施設に移動することなく、その工場で美味しいポテトチップスに。



アメリカからの加工用はダイレクトに工場でポテチになるのね
生食用のジャガイモは生で食べられるの?
一般流通用の生鮮ばれいしょは、スーパーなどで扱われてる生のジャガイモです。
袋に入ってたり、箱で売ってたりする、皮つきのこういうのです↓
生食用だから、加熱しないで生で食べられる、という事ではありません。



ジャガイモは加熱して食べようね!
じゃあ、今問題になってるアメリカから生食用ジャガイモの輸入解禁するかも?の話が話題になってるのはなんで?というと。
現在、アメリカ(ハワイ・グアム・サイパンを除く)から生食用ジャガイモを日本へ持ち込むことはできません。
輸入→卸売→スーパー→各家庭→生ごみや家庭菜園など、どういう扱いになるかはそのジャガイモそれぞれになってしまいます。
家庭菜園などで植えられる可能性も含め、家庭に渡った後のジャガイモを行政が一つひとつ追跡・管理することはできません。





だから生食用は持ち込めないよ!になるんだね
種芋ってなんだ
ジャガイモを植えたらジャガイモになる、とは聞いたことがあります。








じゃあ、ジャガイモ=種芋になれるのでは?
と思って調べてみると。
JAグループ北海道のサイトで「食用イモを、翌年に種イモとして植えると種子伝染性の病気(そうか病、黒あざ病、ウイールス病など)の心配がある」という説明がありました。
つまり、食用として売られているジャガイモを、そのまま翌年の種芋に使うと、種子伝染性の病害を持ち込む心配があります。
だから農家さんも、収穫した食用イモをそのまま種芋にするのではなく、検査に合格した種芋をJAや種苗店から購入するのが基本になっているようです。
国内の種芋には、植え付け前・栽培中・収穫後と、それぞれの段階で検査が行われています。
その検査対象には、ジャガイモシストセンチュウやジャガイモシロシストセンチュウも含まれています。
種芋は、植えていいよ!というこの検査に合格しないと種芋として売れません。


種芋の畑はすごくしっかり管理されてるよ
農家さん関係の仕事をした際、たろう氏が種芋畑に入るときには靴の消毒をしたり車で近くには行かないなど普通のジャガイモ畑よりも気を付ける点が多かったと言っていました。
ジャガイモシストセンチュウが畑に入ったら


広がり方が目に見えない恐怖
ジャガイモシストセンチュウが畑に入ってすぐにジャガイモが育ちにくくなる、という目に見えた被害になるものではありません。
侵入から5年以上気づかないこともあります。しかも一度入ると、シストの状態で15年以上休眠しながら畑に居座り続けることも。





広がり方も色々あるだろうね
農業機械に付着した土、雨水による土壌の流出、行き来する人間や動物に付着して、あらゆる「土の移動」が、シストセンチュウが別の場所へ運ばれるきっかけになります。
北海道はジャガイモの一大産地
気づかないままにジャガイモなど寄主植物を植えるたびに、土の中のシストセンチュウの密度は、さらに高くなっていきます。
北海道は、国内のジャガイモ生産の約8割を占める大産地です。
農林水産省の資料(令和3年度)では、種ばれいしょの採種生産量でも北海道が97%を占めています。
生食用・加工用・でん粉原料用・種芋と、幅広い用途の供給拠点になっています。
もしシストセンチュウの被害が広がれば、収穫量が減り、価格や供給に影響が及ぶ可能性があります。
過去の事例
羊蹄山麓地域では1972年にジャガイモシストセンチュウが初めて発見されました。
他地域への移出用種いもの生産も行われていましたが、諦めざるを得ない状況に。


種芋は畑に植えるものだから広げちゃうってことだね…
2015年には網走でジャガイモシロシストセンチュウという、ちょっと違う種類のシストセンチュウも発見されました。
現在の北海道各地では、ジャガイモシストセンチュウに悩まされている畑がぽつりぽつりと存在しています。
北海道で見つかってから、長年にわたって徹底した防除対策が続けられてきました。
それでも、最初の発見から50年以上が経過した現代でも、シストセンチュウが発生していない「無病地域」を確保し続けることは、とても難しいことです。
もし、ジャガイモシストセンチュウが畑にいるとなると、ナス科以外の作物を育てたり、土が移動しないようにすごく気を付けなければならない事がたくさんあります。





農家さんもジャガイモも悲しい事になっちゃうんだ…
対策はないの?
ジャガイモシストセンチュウが侵入してしまった場合でも、打つ手が全くないわけではありません。
- 土壌くん蒸剤による消毒(線虫密度を数%まで低減できる)
- 対抗植物の栽培による”おとり作戦”(卵密度を40〜90%低減できる)
- 抵抗性品種の開発・普及(密度を1/10まで減らせる品種もある)
- ナス科以外の作物への転作(小麦・豆・てん菜などは問題なく栽培できる)
複数の対策を組み合わせながら、土の中にいるジャガイモシストセンチュウの密度を下げていくことが現在では行われているそうです。
それでも、ジャガイモシストセンチュウがいる畑で色々するとなると、他の畑に土が移動しないようにすごく神経を使うのだろうなと思います。
そして、畑から完全にジャガイモシストセンチュウがいなくなる!というのは、すごく時間がかかって大変な事なんだろうなと。
私たちにできることはあるの?
一消費者としてできそうな事ってなんだろう?と考えてみました
- ジャガイモシストセンチュウとは何か、北海道のジャガイモ・種芋生産の規模がどれくらいかを知っておく
- 農家さんだけの問題ではなく、価格や供給を通じて自分の食卓にも関わってくる話だと認識する
- 出所不明のイモを家庭菜園に植えない、農家さんの畑などに無断で立ち入らない



ジャガイモには健やかであってほしい…!
最後に
振り返ってまとめてみると、
- シストセンチュウは、人間が食べて危険な虫というより、一度畑に入ると長期間残り、農業生産に影響する虫。
- そして種芋は、次の畑へ植えるためのものだからこそ、病害虫を持ち込まないための管理が特に重要。
- 一般流通用の生鮮ばれいしょを輸入する場合には、加工用とは違って、輸入後のジャガイモを一つひとつ管理することが難しくなる。
というのが、アメリカからの生食用ジャガイモが輸入された時の問題になるんだなと。
ちなみに、アメリカは2020年に、この一般流通用の生鮮ばれいしょの輸入解禁を日本に正式に要請しています。
2026年9月現在、農林水産省とアメリカの間で検疫協議が進行中です。
病害虫のリスク評価は完了していて、今は病害虫が国内に侵入・まん延するリスクをどのように抑えるか、リスク管理措置を検討している段階のようです。
今後の流れを気にかけたいなと思います。
以上、ジャガイモで育った十勝民・おかめでした。


参考にした情報一覧
- 農林水産省・植物防疫所「ジャガイモシストセンチュウの解説」「ばれいしょの技術情報」
- 農林水産省「米国産一般流通用生鮮ばれいしょに関する説明資料」「アメリカ合衆国産ばれいしょ生塊茎に関する植物検疫実施細則」など
- 農林水産省「国内種苗の検査について」
- JAグループ北海道「チャレンジ家庭菜園 ジャガイモ」
- 日本いも類研究会「じゃがいもMiNi白書 種いもの世界」
- 冨田義昭「『JAようてい』の馬鈴しょ産地形成の経緯―病害虫対策と用途の多様化に挑んだ先進的産地―」
など











