大雪山は「たいせつ」「だいせつ」どっちが正解?読み方が2つある理由と英語圏での言い方
大雪山系の黒岳に登ってきたたろう氏。
こんな事を言い出しました。

今まで気付いてなかったけど、だいせつざんってふりがなふってあった




たいせつざんでなく?
なんでも、大雪山についての説明パネルのふりがなが「だいせつざん」だったそうで。
夫も私もその周辺もだいたいみんな、「たいせつざん」呼びです。
- なんでだいせつざんって呼ぶの?
- そもそも「だいせつ」「たいせつ」どっちが正しいの?
- 英語だとだいせつざんなの?たいせつざんなの?
と気になって調べてみる事にしました。
結論から言うと、







たいせつざんも、だいせつざんも、間違いじゃない!




え?どういうこと?
じゃあなんでこんな事になってるの?
っていう、ややこしい話をこれからします。
あ、ちなみに大雪山系って何て読みます?
考えながら読んでみて下さい。
大雪山ってそもそも何?


ひとつの山を示す名前じゃありません。山のかたまりです。
旭岳、黒岳、白雲山など、たくさんの山が集まった山群のことを指していて、上川&十勝地方にまたがる、いわゆる「北海道の屋根」です。
言葉としての初出は明治36(1903)年の「日本名勝地誌」という本だとされています。
実際に国立国会図書館のデジタルコレクションで確認してみたのですが、「大雪山(元名ヌタカウシュベ)」として、ふりがなつきで記述がありました。
山のかたまりってどういう事?とかその辺の話はコチラをどうぞ。


アイヌ語だと何て言われてたの?
個別の山をさして○○ヌプリとか呼ばれてたみたいです。
本に載ってたヌタカウシュベってどんな意味なの?と調べてみたものの、同じ単語でこれ!というものは見つけられませんでした。
環境省のレンジャーさんが書いているブログを読んでいたら、大雪山を表すアイヌ語「ヌタプカウシペ」の語源についての考察を見つけました。が、意味には諸説あると結論づけられていました。
大雪山のアイヌ語はカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)が有名ですが、それもまた違う響きですよね。
大雪山=たいせつざん(Taisetsuzan)


まず「たいせつ」派の代表格が、国土交通省の中の国土地理院。
国土地理院の、立体地図(日本の主な山岳)では大雪山系の峰々が「たいせつざん」表記になっていました。
そして、地元の施設や商品名。「旭川大雪クリスタルホール」や日本酒の「大雪の蔵」、酒蔵の「上川大雪酒造」地名の「大雪通」などなど。
校歌で大雪or大雪山が含まれている場合も、「たいせつ」で濁らないのが一般的な印象です。




地方的な呼び名っていうより、ほとんどの北海道民が「たいせつざん」呼びなんじゃないのかな?という個人の体感です
で。
さっき話した明治に出版された「日本名勝地誌」でも、「たいせつざん」のふりがなを確認できました。
大雪山=だいせつざん(Daisetsuzan)


一方「だいせつ」派の代表は環境省。
1934年の大雪山国立公園の指定時から、ずっと「だいせつざんこくりつこうえん」です。



だから黒岳のパネルも「だいせつ」ふりがななのか







“たいせつ”山国立公園じゃなかったのね!
明治の北海道を舞台にした作品・ゴールデンカムイのアニメ17話では尾形が「だいせつざん」って言ってたりします。実写だとどうなってるんでしょう。
あと、調べてみたら英語圏のSNSなどではDaisetsuzanが一般的みたいです。
英語圏のページやSNSを見ていると今回検索した範囲での話ですが「Daisetsuzan」という表記がかなり目立ちました。
一方、日本語併記で「Taisetsuzan」という投稿も。こちらは日本人アカウントさんが多かったという印象でした。
それで更に調べてみたら、環境省や国交省の公式ページ、Googleマップの英語翻訳だと国立公園表記はDaisetsuzan。







スマホの言語設定英語にしたら、英語でGoogleマップみれるんだね
そして、さっき話した明治に出版された「日本名勝地誌」で、実は「だいせつざん」のふりがなもあるんです。
著者が間違ったのか、敢えて二種類にしたのか、印刷ミスのミラクルなのか…。
実際のところは謎です。
なんでこんなややこしい事に?
東川町のコラム
上川地方の東川町が出している町史のコラムに、まさにこのことがまとめられていました。
国が「大雪山」の管轄を複数の機関にまたがらせてしまったせいで、テレビやラジオも「国立公園を指す時だけだいせつざん、それ以外はたいせつざん」という使い分けをしている、という旨が紹介されていました。
読売テレビの話
調べていると、読売テレビの「ことばの話」というコーナーのアーカイブでこんな話を見つけました。
2008年、札幌テレビが大雪山の呼び方に関する社内のアナウンスルールを見直したという話でした。
ざっくりまとめると、環境省と国土交通省(国土地理院)で別々の言い方になっててややこしいから「だいせつざん」呼びにしてたけど、国立公園は「だいせつ」それ以外の大雪は「たいせつ」にするという旨の話でした。
また、見直す前から「たいせつって呼んでるのに、なんでテレビではだいせつって言うの?」という問い合わせも実際に来ていたようです。







2008年以前はテレビで「だいせつざん」呼びだったの!?
と思いますが、全く記憶にありません。普段から気にしてない話なんだなと思いました。
とはいえ。
ややこしい。ものすごくややこしい。
どっちもある意味正解なんだもの。


なんなんだもう


なんて言えばいいのこれ
どうしろってんだ。という気持ちになりつつ。
ただ、「大雪山国立公園」という国立公園の名称については、環境省が「だいせつざんこくりつこうえん」としています。
なので、大雪山国立公園は「だいせつ」と読むのが公式の呼び方になりますね。
ここまできたら、大雪山国立公園の名前の由来をその当時の資料とかを探して調べてみたいですが、それはひとまず置いといて。
さて、考えて頂けましたでしょうか。
じゃあ大雪山系って何て読む?
大雪山の中の山を示すとき、大雪山系旭岳とか大雪山系黒岳とかって聞いたこと、言った事ありませんか?
そのとき、なんていってます?




たいせつざんけい?
たいせつさんけい?
だいせつさんけい?



またややこしい事言い出した!
たいせつざんけい呼び


私たちは「たいせつざんけい」と呼んでました。
私の周りがみんなそうとはいえ、私は親が道東出身十勝民、夫は登山好き札幌市民なのでサンプルが偏ってるかもしれません。




たいせつざん・けいってことじゃないの?
たいせつさんけい呼び
テレビやラジオは濁りません。「たいせつさんけい」になります。
たいせつざん、って言う割に大雪山系になると濁らなくなるっていう。
先程も紹介した読売テレビのアーカイブで、2008年以降このルールで統一していく経緯も紹介されていました。
大雪+山系=たいせつさんけい
として扱う事になったそうです。
YouTubeで北海道ローカル局のニュースをいくつか見てみても、実際に「たいせつさんけい」と発音していて驚きました。







紅葉のニュースになるとよく聞いてたのに、全然気付いてなかった!
調べてみたら、毎日新聞の記事でも「大雪山系(たいせつさんけい)」とふりがなが振ってあるのを見つけました。
Daisetsuzan Volcanic Group
英語で大雪山系ってなんていうの?と思って調べたら、
「Daisetsuzan Volcanic Group」というそうです。
Volcanic:火山の、火山性の(形容詞)
Group:群、集まり(=火山の集合体という意味)
つまり、大雪山火山群になってるようで。
更に調べると、英語版のWikipediaだとDaisetsu-sankeiという表記も見つけられました。







まさかの「だいせつさんけい」
この言い方が英語圏でどれだけ一般的なのか気になるところです。
大雪山の呼び方一覧
ややこしすぎるので、一覧表つくりました。
| 対象 | 読み方 | 主な出典・根拠 |
|---|---|---|
| 大雪山(山・通称として) | たいせつざん | 国土地理院「立体地図」、デジタル大辞泉(見出し語)、旭川・上川の地名や商品名(大雪クリスタルホール、大雪の蔵、上川大雪) |
| 大雪山(山・通称として) | だいせつざん | 黒岳の解説パネル、ゴールデンカムイ(アニメ17話・尾形の発言) |
| 大雪山国立公園 | だいせつざんこくりつこうえん(公式) | 環境省(1934年の指定時から一貫) |
| 大雪山系 | たいせつさんけい | 読売テレビ「ことばの話3380」(2008年以降の放送統一ルール)、毎日新聞、北海道ローカル局のニュース |
| 大雪山系 | たいせつざんけい | 私たち家族の間での呼び方(サンプルは偏りあり) |
| 大雪山系 | だいせつさんけい | 英語版Wikipedia「Daisetsuzan Volcanic Group」のnative name表記「Daisetsu-sankei」 |
| 表大雪 | おもてたいせつ | 観光庁 多言語観光情報ページ(英語訳:Omote-Taisetsu) |
| 表大雪 | おもてだいせつ | 「日本歴史地名大系」(平凡社、コトバンク掲載) |
| 大雪山(英語・国立公園として) | Daisetsuzan | 環境省・観光庁の公式ページ、Googleマップ、英語圏SNS |
| 大雪山系(英語・地質用語として) | Daisetsuzan Volcanic Group | 英語版Wikipedia、観光庁 多言語観光情報ページ |
最後に
以上、謎が解けたようで解けないややこしい話でした。
最後にもう1個だけややこしい事を。
大雪山には表大雪、東大雪などの更に小分けにしたグループ名があります。
そのグループ名も、媒体によっては表大雪「おもてたいせつ」「おもてだいせつ」になって表記揺れをするようです。
観光庁(国土交通省の一部)が出してる国土交通省 多言語観光情報ページの英語訳だと濁らない「おもてたいせつ」になってたので、国土交通省は濁らないようにしてるのかな?とか思ったりしました。
調べる中で、旭川の方の学校の校歌には大雪or大雪山が含まれてる事が多い事を知りました。
私が通ってた小中高はだいたい「日高山脈」関連のものが入ってたような覚えがあるので、地域によって校歌に入る山の名前とか存在感のある自然の名称が入るのかな?と思ったりしました。
校歌の歴史も調べると楽しそうです。
以上、登った事がある大雪山系な山と言えば白雲山な十勝民・おかめでした。


参考にしたもの
- 国土地理院「立体地図(日本の主な山岳)」
- 環境省 大雪山国立公園(公式サイト)
- 環境省 大雪山国立公園 アクティブ・レンジャー日記
- 国土交通省 多言語観光情報サイト(大雪山国立公園 解説PDF)
- 国立国会図書館デジタルコレクション「日本名勝地誌 第九編 北海道之部」(明治36年、博文館)
- 東川町「東川町史 第3巻」コラム「大雪山と旭岳」
- 読売テレビ「ことばの話3380 大雪山の読み方」
- 英語版Wikipedia「Daisetsuzan Volcanic Group」
- Googleマップ











